2025年8月度
苦難は「心の名曲」なり
<「さあ、何でも来い!」>
人生の旅には、
まるで長く暗いトンネルに入ったように、
先の見えない、
苦しい試練が打ち重なる時が、
誰しもあろう。
妙法の信仰は、
その中で、
いやまして鮮烈に蘇生の光を放つ。
日蓮大聖人は、
老いたる姑の看病に尽くした後も、
自らの闘病が続く富木尼御前へ、
真心の献身を労いつつ、
「これで必ず治すと決めて、
これからの三年、始めた時と同じように、
しっかり治療していきなさい」※1と、
焦らず粘り強い執念の治療を促された。
そして「法華経の行者」として、
「強盛なる信心で、
どうして病が癒えず、
寿命が延びないことがあろうか」※2との確信で、
体を大切にし、
心の中であれこれ嘆かないようにと、
励まされている。
御書を開けば、
病気や
家族との離別、
生活の困窮、
理不尽な圧迫など
千差万別の悩みを、
大聖人の仰せ通り、
同志と支え合い、
変毒為薬してきた
「法華経の行者」たちの群像が拝される。
尼御前の伴侶・富木常忍へは、
「難を却けて福の光る先兆ならんのみ」
「災い来るとも、変じて幸いとならん」※3と示されている。
自行・化他の誓願の題目を唱え、
広宣流布に生きゆく我らには、
一切の事象が「願兼於業(願、業を兼ねぬ)」であり、
「転重軽受(重きを転じて軽く受く)」である。
ゆえに、
「さあ、何でも来い!」と、
悠然と迎え撃ち、
断固と祈り抜き、
祈り切るのだ。
そして、
人間革命、宿命転換という
生命の逆転勝利の劇を飾り、
多くの苦悩の友へ限りない勇気を送るのである。
逆境のトンネルを抜ければ、
明るい福智の大海原が洋々と開かれている。
師・戸田先生は、
いじらしい草創の関西の女性たちに語られた。
「泥沼が深いほど、
大きな美しい蓮華が咲く。
人も苦労が多いほど、
幸福の蓮華の花を
大きく美しく咲かせ広げられるんだよ」と。
今、まさに常勝の人華が朗らかに咲き誇っているではないか。
入会八十四年を迎えた妻が、
宝友と大切にしてきた指針には、
「希望は心の太陽」
「努力は心の王道」
「苦難は心の名曲」なりと。
苦しくも
この坂こえて
真金の
いのち輝け
不二の共戦
※1 新版1316頁、全集975頁
※2 新版1317頁、全集975頁
※3 新版1321頁、全集979頁
2023年大白蓮華8月号№886 巻頭言